中国経済クラブ(椋田昌夫理事長)は7月22日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。神田外語大の興梠一郎教授が「いま、中国で何が起きているのか?~習近平体制の現状と課題」と題して話した。日本に威圧的な行動を続ける背景について、習近平国家主席が「体制内部に不安を抱いている表れだ」との見方を示した。要旨は次の通り。
習政権の特徴の一つは、中国軍による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験、富士電機グループの日本人社員2人の逮捕など強気な行動。鄧小平氏以来の改革・開放路線は、外国の技術と資本導入により中国を大国にしたが、習氏は日本や米国との対立を嫌がらない。習氏の不安の一つは経済が良くない点。さらに、政治局の側近や幼なじみの軍幹部までも「自分の座を狙っている」と映り、粛清したのだろう。日本に対する行動にもそうした不安が影響している。
世界第2の経済大国になった。一般的な経営感覚では、輸出先として経済的な結びつきの強い日本や韓国、米国と友好的にするものだが、習政権はけんかをする。大事な取引先でも、自由と民主主義は最大の敵だからだ。政権の安全を優先する判断だ。
中国は経済的には(成長が長期間停滞して先進国入りできない)「中進国のわな」にはまるだろう。国内総生産(GDP)が低い。国内投資がマイナス成長で内需が弱い。地方では不動産が不振でインフラに投資する金がなく、景気刺激策も打てない。今後は軽自動車などの輸出が焦点だが、日中間で関税戦争も考えられる。
14年に反スパイ法が施行されると、日本人がキャンペーン的に拘束された。例えば、富士電機グループの事件はレアアース(希土類)の輸出を試みたとされたが、実際にはよく分からない。日中関係の状況に左右され、今までは良かったのに突然逮捕されるということもあり得るのが実情だ。
23年の法改正では国民にスパイ活動の通報を義務付けた。習氏の悪口を言ったら、通報されて捕まりかねない。法律は国を縛るためのものではなく、国を治めるための当局の道具なのだ。
経済が成長すれば豊かで安全になるというのが鄧氏の思想で、政治や外交で面倒事があっても少しは目をつぶる考えだった。習氏は政治や外交で強硬的に出た結果、経済への影響も出ているのにあまり気にしない。会社経営に例えてみると、こうした人がリーダーを務める会社がどうなるか。結果は明白だろう。