中国経済クラブ(苅田知英理事長)は3月5日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストが「2026年度の経済見通し~株高不況で読み解く日本経済」と題して話した。インフレは今後も続く一方、賃上げの定着で実質賃金はプラスに転じ、消費が拡大する可能性があると見通した。要旨は次の通り。(吉原健太郎)
なぜ株価が高いのに、街角の景気がいまいちぱっとしないように思えるのか。重要な原因が、家計の資産が預金に集中し株式などの投資に向かわない、インフレに弱い構造になっていることだ。元本が守られることが一番安全というデフレ時代の思考の転換に時間がかかっている。
米国やイスラエルによるイラン攻撃で国際情勢の見通しが立たない状況だ。1カ月ほどで一定に落ち着く想定を前提にすると、日経平均株価は5万7千円程度、為替相場は1ドル=155円程度で推移すると予想する。日銀は7月に利上げを行い、来年以降、最終的に2%程度まで政策金利を上げる可能性がある。
昨年10月以降、いわゆる「高市相場」で株価が急騰したが、韓国でもそれ以上に株価が上がっている。地政学的に東アジアの産業の重要性が認識されていると考えられる。
日本の名目国内総生産(GDP)成長率は4%程度と高く、政府債務残高のGDP比は2022年以降急減した。税収も伸びており、財政は改善に向かっているといえる。円安は高市早苗首相の積極財政が原因といわれているが、韓国のウォンも円と同様に下がっており、要因は一概に言えないのではないか。
政府による給付金や電気・ガス料金の補助が家計を支え、値上げしても売上数量が減らない状況が生まれた結果、日本企業は価格競争を重視しなくなった。食料品の消費税を2年間ゼロにする政策は、購買力が他の商品に向かって値上げしやすくなりインフレを加速させる可能性がある。
建築費の高騰で、都市部では再開発が白紙撤回になるケースも出ている。インフレの世界では、設備投資などの意思決定を早めないと手遅れになるため、経済活動のスピードが上がる効果も期待できる。
基本的に賃金と物価は連動する。今は食料品の高騰などで追いつかないが、今年の実質賃金はプラスになると予想している。4年連続の賃上げが見込まれており、若者を中心に将来所得に対する明るい見通しが広がり、消費を増やす動きが出てくるのではないか。
世界経済の鍵を握る米国では、トランプ関税の影響は予想されていたほどではなく、雇用も堅調だ。富裕層の消費が経済を支えており、景気後退の危険性は低いだろう。