活動報告

講演会

中国経済クラブ(苅田知英理事長)は4月27日、広島市中区の中国新聞ビルで講演会を開いた。講談社の近藤大介編集次長が「習近平3期目政権の展望と日中関係」と題して講演。将来に「尖閣諸島有事」が起きるリスクを指摘しながらも、日中関係を冷静に築く大切さを唱えた。要旨は次の通り。

この1週間の大きなニュースの一つが習近平国家主席とウクライナのゼレンスキー大統領の電話会談だ。これは中国がドンピシャのタイミングを選んだとみている。

同じ時期、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が渡米していた。韓国は中国との関係を見直し、日米の側に付くという姿勢を明確にしている。その米韓トップ会談の日に、習主席はゼレンスキー大統領との電話会談をぶつけた。「中国はウクライナの停戦と平和回復のために努力する」ということを世界にアピールする戦略だったのだろう。

実は先月、中国は逆のことをされている。習主席がモスクワでロシアのプーチン大統領と会談する時期に、岸田文雄首相がウクライナを電撃訪問したのだ。これは、北大西洋条約機構(NATO)がタイミングをぶつけたとされ「演出は英国、監督は米国」とも言われている。ポーランドから列車でウクライナの首都キーウに入るというルートをNATOが準備し、日本がそれに乗ったという話だ。中国としては一本とられた状況。ゼレンスキー大統領との電話会談はそれの仕返しだったのかもしれない。

5月に広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)は主要議題が三つあるとされる。一つは核軍縮、二つ目はウクライナ問題、三つ目が中国だ。その「前座」ともされる外相会合が先日、長野県軽井沢町であり、共同声明が発表された。そこには中国に対する非難の言葉が多く書かれた。これが広島サミットの中国問題のひな型になるのだろう。

共同声明に中国は猛反発した。広島サミットで発表される宣言にも、中国は反発するだろう。昨年は日中国交正常化50年だったが大きな式典もなかった。日中関係は雲行きが怪しい。

最近、中国側は「新時代の要求にふさわしい中日関係を構築する」との表現をする。これは中国の立場が上で、中国主導でアジアの新秩序をつくっていく、ということだとみる人もいる。

いま世界で懸念されているのは「台湾有事」。しかし私は「尖閣有事」を懸念している。習政権の立場で見た時、2300万の人口がある台湾との戦争と、誰もいない尖閣諸島を奪うのとどちらを選ぶだろうか。

3期目に入った習主席は21世紀の毛沢東になろうとしているように見える。中国と日本はどう付き合うべきか。垂秀夫駐中国大使は「当面の間、是々非々の関係で」としている。必要なところは付き合う、そうでないところは付き合わない。冷静沈着に、その関係でやっていくしかない。

(了)

中国経済クラブ
  • 事務局長

    宮田 俊範

  • 事務局員

    新久 みゆき、冨田 朋恵